運動効果(エビデンス)について
調査研究の目的・概要
包括的高齢者運動トレーニング(Comprehensive Geriatric Traning,GCT)の介護予防事業として効果を検討するために、介護老人保健施設のデイケア利用者と 一部入所者を対象に、CGTを行う「CGT群」と従来の機能トレーニングを続ける「通常群」の2群に無作為に分け3ヶ月の介入効果を調査。
対象者
歩行が可能で週2回以上トレーニングを継続できる人の中から、同意が得られ健康上問題のない65歳以上の高齢者42名(男性9名、女性33名、平均年齢82.2±6.67際)を対称とした。 対象者を無作為に「CGT群」(20名)、「通常トレーニング群」(22名)とした。
通常トレーニング群(22名) | CGT群(20名) | |
なし | 3 | 0 |
要支援 | 3 | 2 |
要介護1 | 10 | 13 |
要介護2 | 3 | 5 |
要介護3 | 3 | 0 |
主な調査項目
体力、日常生活活動の評価指標として以下の項目を調査。
膝伸展筋力、股屈曲筋力、開眼片足立ち時間、閉眼片足立ち時間、長座位体前屈、ファンクショナルリーチ、Timed up & go test、最大歩行速度(10m)、普通歩行速度(10m)、Barthel Index
CGTの実施概要
トレーニングは週2回、3ヶ月を1単位とし、1単位を4期に区分。
第1期:教育導入期(4回)
第2期:予備筋力トレーニング期(6回)
第3期:筋力強化期(8回)
第4期:機能的トレーニング期(8回)
トレーニングには理学療法士と運動指導士があたった。
結果・考察
CGT群は20名のうち16名がプログラムを完了。通常トレーニング群は22名のうち17名が最終評価を受けた。脱落の理由は、転居、入院などによるものであり 受け入れやすいプログラムであることがわかった。
CGT群は統計学的に筋力(P<01)、体力評価(P<.01)ともに有意な改善を認めた。一方、通常トレーニング群では体力評価の多くの項目で有意な低下(P6<.01)が見られた。
Barthel Indexで評価した日常生活活動は、CGT群の優位な改善効果が認められた。
運動結果について
改善・低下項目のまとめ
通常トレーニング群 | CGT群 | |
---|---|---|
膝伸展筋力 | – | 改善 |
股屈曲筋力 | 低下 | 改善 |
開眼片足立ち時間 | – | – |
閉眼片足立ち時間 | – | 改善 |
長座位体前屈 | 低下 | 改善 |
ファンクショナルリーチ | – | 改善 |
Timed up & go test | 低下 | 改善 |
最大歩行速度(10m) | 低下 | – |
普通歩行速度(10m) | 低下 | – |
Barthel Index(ADL) | – | 改善 |
確かな効果が認められた |
文献:平成12年度厚生労働省老人保健健康推進等事業
「介護予防としての高負荷筋力増強訓練の応用に関する調査事業」報告書. 2001
効果判定の要素(レーダーチャート印刷まで)
握力 | 平均値70~74歳男性:36.2kg/女性:22.8kg |
---|---|
歩行能力(最大歩行速度) | 5m歩行能力テスト |
静的バランス(ファンクショナルリーチテスト) | 立位においてどれだけ重心を支持基底面の中心から離せるかを検査するバランス評価テスト |
開眼片足立ち | 壁から50cm程度離れて壁を向いて素足で立ち、両目を開けて両手を楽に下げ、床に着けている「支持足」がずれるか、支持足以外の体の一部が床に触れるまでの時間を最大1分まで測る。 |
長座位体前屈 | 床に膝を伸ばして座った状態から上体(上半身)を前にできるだけ曲げる大きさの柔軟評価 |
TimeUp&Go(バランス) | 椅子に座った状態から立ち上がり3mを通常の速度で歩き、ターンして戻って来て再び座るまでの時間 |
最大屈伸展筋力 | 座位姿勢から腰部を固定した状態で、足の伸展動作を全力で行なった場合の筋力評価 |
体力評価